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Special Talk Session #62

『ヘブンバーンズレッド』スペシャルインタビュー
劇中バンド She is Legend 茅森月歌ボーカル担当・XAI

Keyの麻枝 准がシナリオと作曲を手がけ、Wright Flyer Studiosが制作・配信を担当するドラマチックRPG『ヘブンバーンズレッド(通称:ヘブバン)』。主人公・茅森月歌(かやもり るか)が率いるセラフ部隊 第31A部隊はバンド「She is Legend」を結成しており、月歌のボーカルはアーティストのXAIさんが担当している。デビュー5年目を迎えたXAIさんは今何を思い、「She is Legend」の歌に何を乗せているのか? その人となりにも迫るロングインタビューをお届けしよう。


interview = Shu
photo = Toru Izumisawa


PROFILE ―

XAI(アーティスト)

東宝芸能所属。幼少期より、音楽を愛する両親のもとでオペラから流行のポップスまでさまざまな歌に満ちた環境で育つ。2016年の第8回「東宝シンデレラ」オーディションでアーティスト賞を受賞し、2017年11月15日にアニメーション映画『GODZILLA 怪獣惑星』の「WHITE OUT」でデビュー。同シリーズ3部作の主題歌を担当した。

音楽一家に生まれ
学生時代は演劇部でミュージカルに没頭

――ご両親が音楽好きであるそうですが、音楽関係の仕事をされているのでしょうか?

XAI 両親ともに音楽が大好きですが、それを仕事にしているわけではないんです。でも、家には天井からスピーカーが吊るされているくらいで、私が物心付いた頃からいつも何らかの音楽が流れていましたね。父は今も余暇に時間を作ってはギターで弾き語りをしています。

――それならば、XAIさんもさぞ音楽漬けの幼少期だったのではないでしょうか。

XAI そうですね。幼稚園から小学校くらいまでは車で連れられての移動が多く、両親それぞれの好きな曲がよく流れていました。そんな日々を過ごすうちに「車の中で聴く音楽」が、私の中でどんどん特別なものになっていったように思います。

父は、サザンオールスターズさん(※1)TOTOさん(※2)をよく聞いていました。サザンの桑田佳祐さんの歌声の色っぽさは幼心にも残っていて、「今、聞いてはイケナイものを聞いているのでは?」などと思ってしまいましたね(笑)。母は宇多田ヒカル(※3)さんが好きで、私も一緒に聴いているうちに曲を覚えてよく歌っていました。

また、祖母はいしだあゆみ(※4)さんの「ブルー・ライト・ヨコハマ」が好きで、幼い私にまるで子守歌のようによく歌ってくれました。それも一緒に歌うようになったらすごくほめてくれて、そんなことも印象に残っています。

――音楽一家という言葉がピッタリですね。それではご自宅の外……学校では音楽とどのように接しておられましたか?

XAI 学生時代は演劇部に所属していました。舞台劇や演劇、ミュージカルを行う部で、歌や踊り、演技の練習に一生懸命でしたね。

――軽音部や合唱部のような、歌に集中できる部ではなかったのですね。

XAI 当時は母とよく観劇に行っていたので、ミュージカルに親しみがあったんです。中高一貫のミッションスクールに通っていたので、毎朝礼拝の時間があって讃美歌を歌っていました。そんなこともあって、音楽に触れる機会は多かったと思います。ただ、当時は学校に通うのが本当に辛くて……。

――よろしければ理由をお聞かせください。

XAI 周囲の大きな音が本当に苦手だったんです。通学のために電車に乗るのが結構辛くて……。それを少しでも遮断できるよう、登下校中はずっと音楽を聴いていました。うまくコミュニケーションを取れなくて、クラスの子たちともなかなか打ち解けられなくて。話しかけると自分に注目が向くのがどうにも緊張して苦手だったりして……。そんな日々だったので、音楽は私にとって身を守るためのものでもありました。

――雑多な音や視線に敏感だったのですね。ミュージカルで歌や踊り、演技を披露するのは大丈夫でしたか?

XAI ミュージカルをやっているときは、私ではない別の誰かになっているという感覚だったので平気でした。

――音楽を通じてのコミュニケーションなら楽しめた、ということでしょうか。

XAI 楽しいというより、音楽に身を委ねることが自分を保つ行為だった、という方が近いかもしれません。自分が唯一自由になれる時間といえばいいでしょうか。この気持ちは今も変わってません。たぶん、当時は歌だけではなく演技にもそう感じていたのだろうと思います。

――歌に芝居に踊り……と、ミュージカルの稽古はきっと厳しいですよね。上級生から指導を受けることもあっただろうと思います。

XAI 私は本当に生意気なところがあったので、いま思い返すと先輩後輩を問わず部のみんなから煙たがられていた所もあったんじゃないかと思います。得意なことで目立つのは好きだったから、練習自体は一生懸命やりました。部内のオーディションで主役の座をまかせて貰ったりもしました。

――なるほど。当時から高い歌唱力をお持ちだったのですね。周りの子たちより優れているかも、という自覚はありましたか?

XAI 歌に関しては、そういう気持ちがなかったと言えばきっとウソになってしまいますし、それが自信につながった面もあると思います。私が中学・高校を通して唯一続けられたのがミュージカルだったので。歌割が多い役をもらえなかった時はすごく悔しかった記憶があります。



歌唱アーティストは
雲の上の存在だった

――XAIさんの音楽遍歴もお聞かせください。音楽漬けの幼少期を経て、学校に通うようになってからはどのような曲を聞いていましたか?

XAI 小学校まではその時々の流行り曲が好きで。いきものがかり(※5)サカナクション(※6)Superfly(※7)コブクロ(※8)などが好きでした。中学に上がると、そこで仲よくなった子たちがボカロ(※9)好きで、その影響で私もボカロにすっかりハマってしまいました。ボーマス(※10)にも行きましたね。ハチ(※11)さんにサインをもらいました(笑)! また、小さい頃からアニメも好きだったので『マクロスF(※12)』にも夢中になって、そこから菅野よう子(※13)さんの曲を幅広く聴いたりもしました。そして高校に上がると、友達からMANYO(※14)さんとやなぎなぎ(※15)さんのユニットmamenoiのアルバム『Tachyon』を教えてもらって、試験前は永遠リピートしていた記憶があります。

――急に身近な話題になってきました(笑)。部活は演劇部だったとうかがいましたが、歌一本、音楽一本に専念したいというような気持ちはありませんでしたか?

XAI ミュージカルはやりがいがありましたが、その中でも何より好きなのはやっぱり歌うことだったので、中学の頃には漠然とではありますが「将来は歌を仕事にしよう」と思っていました。"(仕事に)したい"ではなく、"する"というくらいの確固たる気持ちでいました。

――それでは、学生時代に「歌唱アーティスト」デビューをしてみよう、などとは?

XAI 今は、歌い手としての活動ってプロになるための登竜門というような意味合いもあるかもしれないし、ぐっと身近になったように感じるけど、当時の私はどうやって曲を収録して、それを動画にして公開すればいいかが全然分からなくて……。私と同世代で元々歌い手だった方にはDAOKO(※16)さんがいますが、「私と同世代なのにすごい!」と思うばかりで自分でやろうっていう発想には至りませんでした。私にとって歌い手の皆さんはプロも同然で、雲の上の人たちぐらいに思ってたので。でも今は、やってみればよかったかな、とちょっと思っています(笑)。



歌うことは、
自分を救ってくれた音楽への恩返し

――それでは、そんな音楽好きの少女が「アーティスト・XAI」となるまでをうかがえればと思います。アーティストになるための具体的なアクションはいつ頃から行われていたのですか?

XAI カラオケで歌声をCD-Rに焼いたものを同封したりして、小学校の頃からオーディションに応募はしていました。先ほどもお話しましたが、高校に上がってからは『マクロス』の虜になってしまったのでフライングドッグ(※17)『マクロスΔ(※18)』の歌姫オーディションにも応募しています。こういうお話をすると「そこまで歌が好きなのにバンドはしなかったんだね」と言われるのですが、私は考え方がヘンなんですよね……。『マクロスF』から受けた影響が大きすぎて、いつの間にか私の中で音楽活動=ソロの歌手というイメージで固定されてしまったんです。しかも誰かと何かを一緒に作る、というのが凄くハードルが高く感じていました。

――『マクロスF』の歌姫・ランカとシェリルは確かにそういう描写でしたが、その影響とは! それならば、もしXAIさんが『マクロス7(※19)』を最初に見ていたら逆にバンド活動を熱心にされていたのかも……?

XAI そうかもしれません(笑)。

――話を戻しますと、2016年の第8回「東宝シンデレラ」オーディション(※20)もそうやって受けたオーディションのひとつだったのでしょうか。

XAI 前々から気になっていた『テニスの王子様(※21)』のミュージカルを観にいったときに、劇場で配布されたチラシにオーディションの募集告知が入っていたのがきっかけでした。アーティスト賞が初めて設立されて、全員の歌を対面で聴く!と書いてあったので「よし、これにも応募してみよう!」と。

――オーディションにはどのように臨まれましたか?

XAI 歌う曲の候補はアッパーな曲とバラードの2曲までしぼってあって、当日どちらを歌うかは直前に決めればいいと思ってました。自分の番が来てドアの前に立ったときに、ふと、そのとき亡くなったばかりだった祖母のことを思い出して、「オーディションの結果がどうなるかは分からないけれど、今回は祖母のために歌いたい」という気持ちが沸いてきたんです。そんな経緯もあって、バラードの方を歌おうと決めました。『マクロスF』の「ダイアモンド クレバス(※22)」です。私にとって、たったひとりの人を思い浮かべてその人のためだけに歌うのはこのときが初めてで、このオーディションはとても特別な体験だったなと思います。なんだか祖母に導いてもらったような気もして、「もし落選したとしても、全然悔いがないかも」と思えたんです。

――そうやって誰かのために歌った歌が、審査員の心にも響いたんですね。

XAI 合格の知らせをいただいたときは本当に嬉しかったです。私は、これでやっと歌にもっと深く関われるのだという気持ちでいっぱいでした。

――そうしてアニメ映画『GODZILLA』三部作(※23)の主題歌でデビューが決まり、2017年11月の「WHITE OUT」、2018年5月の「THE SKY FALLS」、同年11月の「live and die」と約1年間で3rdシングルまでが一気にリリースされました。一部の曲では作詞も手がけられていますが、当時を振り返ってどう感じられますか?

XAI 振り返ると1年間で3枚も出させていただいたんですよね……。あの1年間はとても長かったような気がしているし、最近のことのようにも遠い昔のことみたいにも感じます。自分の今までの人生を大きく変えた時期だったと思っています。私は歌が大好きなんですけど、自分の歌声に自信があるわけではなくて。そのときから今に至るまでずっと、私の歌って人に聞いてもらう価値があるものなのかな、と自問し続けています。

――プロのアーティストがそこまで思っておられるのは意外です。オーディションで受賞に輝いても、評価する人がいるという実感にはつながらなかった?

XAI そうですね……。それと、プロデュースしてくださる中野雅之(※24)さんがご自身のバンド活動を終えられてすぐの頃だったので、中野さんのファンの皆さんにいいと思ってもらえるだろうかというプレッシャーもありました。だからこのときは、まず中野さんに私の歌を認めていただくのが第一歩だと思っていました。とにかく、今はこの方に少しでもついていかなくちゃ、少しでもいいと思ってもらえる歌を歌わなくちゃ。それこそが、自分が救われてきた素晴らしい音楽に近づく一歩なんだって。私は辛いときや悲しいときに音楽に数えきれないほど救われてきたから、いつかは私の歌で同じ気持ちになってくれる人がいますように……そうなれなければ音楽をやっている意味がない……。そんな風に思いつめていた時期だったと思います。

――音楽への恩返し、というところでしょうか。それがXAIさんの根底にあるのですね。

XAI そうなのかもしれません。3rdシングル「live and die」では英詩での作詞もしているんですけど、自分の中にある切実な願いを表現できた曲だったんじゃないかなと今になって答え合わせのように思ってます。

――それは具体的にどのあたりに込められていますか?

XAI 2番の「seeking friends, playing the symphony」―シンフォニーを奏でる友を探し続けている……というフレーズです。これは、私が人生をかけて音楽活動をしていくうえで、いつか叶えられたら……と思っていたことで、後年になって『ヘブバン』に叶えてもらったと思っています。

――『ヘブンバーンズレッド』の劇中バンド「She is Legend」のもうひとりのボーカルである、鈴木このみ(※25)さんという同志に会えた?

XAI 同志と思わせてもらっていいのかわからないけど、私にとってはすごく心強い存在です。このみさんもそうだし、麻枝 准さん、Keyの皆さん…『ヘブバン』を通じて出会えたすべての皆さんにそんなふうに感じているんです。



アルバム「Job for a Rockstar」
各曲コメンタリー

――2022年12月14日にはShe is Legendの1stアルバム『Job for a Rockstar』がリリースされました。

XAI 麻枝 准さん、このみさん、そして『ヘブバン』を愛する皆さんに出会えた作品をこのような形でお届けできることが本当に嬉しいです。私にとってどれだけ大切なアルバムか!言葉で表せないです。このみさんと作ってきたシーレジェの軌跡を感じて欲しいです!

――She is Legend 茅森月歌のボーカル役としてオファーを受けた際はどのように感じられましたか?

XAI 私がビジュアルアーツさんから最初にお声がけをいただいたのは、音楽活動がうまくいかなくてすごく苦しい思いをしてた時期だったんです。毎日無力さを感じて、私はこれからも歌や、音楽を続けていけるのだろうかと不安に苛まれていたから、わたしを見つけて、一緒に仕事をしたいと思ってくれる人がいたことに救われた気持ちでいました。そんな中で麻枝さんに出会って、『ヘブンバーンズレッド』という作品を知っていって……She is Legendとしてレコーディングを重ねていくうちに「わたしって歌うことがこんなに好きだったんだなあ……」とだんだん原点に立ち返っているような感覚がありました。レコーディングが始まる前、麻枝さんに「XAIさんにはブレイクスルーのようなものが必要なのではと思っていた」と言って頂いたことがあって。麻枝さんの中ではそれは私の音楽活動に対しての言葉だったと思うのだけど、それ以上に、もっと根本的な気持ちの部分でブレイクスルーさせていただいたんじゃないかなと感じてます。

――それでは「Job for a Rockstar」の各収録曲について、XAIさんから見た魅力・聴きどころを教えてください。

■Burn My Soul
シーレジェとして一番初めにレコーディングした曲で、一番肩に力が入っていた…とも言えるかもしれません。「She is Legendがここから始まるんだ」という思いでレコーディングに臨みました。私はここまでBPMが早くて言葉数が多い曲をあまり歌ってこなかったのでレコーディングはなかなか苦戦しました。一度録り終えたあとに後日もう一度レコーディングをしたのもこの曲だけでした。私にとっては「XAIの歌とは/茅森月歌の歌とはどういうものなのか」に悩んで、茅森月歌の歌をKeyの皆さんと育てる道の始まりに立った曲だったと思います。一足先に作中のライブシーンを見せてもらったときの感動は忘れられません!

■Dance! Dance! Dance!
アルバムには、最初にレコーディングした音源に追加収録したバージョンが収録されているんですけど、その追加収録のときにこのみさんとあらためて自分たちの歌を聴き直して「She is Legendが始まったばっかりの初々しさや気概を感じるよね」と話していました。ちょっと声が硬かったりして。今聴いても、自分たちの強い思い入れを感じます。あとはシーレジェのキャッチーな掛け合いが産まれたのもこの曲からですよね!

■ありふれたBattle Song~いつも戦闘は面倒だ~
この曲に限ったことではないんですけど、レコーディング時はいつも曲名を知らされてないんです。麻枝さんが後から付けるのが通例となっているので「そんな曲名だったんだ!」と驚くことが多々あります!(笑) この曲名はその最たるもので、麻枝さんのユニークなところが前面に出ているなあと感じます。「ザコ戦ばかりで嫌になる」って言っていいんだ!って。ゲームがメインストーリー第3章、第4章と進んでいくと歌詞もどんどん切実なものになっていくので、これはまだ茅森たちの心に余裕があるときの歌詞だなとも感じます。

■Pain in Rain
「期せずして降る雨だ」という歌詞も含めて、Aメロがすごくお気に入りです。シーレジェって、サビで雰囲気がぐっと変わる曲が多いなと思ってるんですけど、この曲はそのバランスが好きです。寂しくて、けどちょっと空元気に楽しくて。このみさんとふたりで歌う曲の中では実はこの曲のメロディーが一番好きかもしれません。ライブに向けて練習していても、ゲーム内ムービーと同じように世界がブルーに染まって見えるくらい、エモーショナルな気持ちになります。

■オーバーキル
シーレジェの中でもトップレベルにハードな曲。「おはよう世界」というフレーズがすごく気に入っています。「笑ってcry」……麻枝さんらしい歌詞だなあ。それと、一番"ライブ映え"する曲だと思っています。Serenity in MurderのAyumuさんによるカレンちゃんのスクリームも多いので、ライブに向けてたくさん聴いて予習してもらえたら嬉しいです! ライブの振り替え公演が行われる2023年3月(で観客の声出しが解禁されているかは分かりませんが、解禁されていたら)この曲が一番盛り上がると思います。このみさんのライブパフォーマンスに注目です!

■過眠症
歌詞や世界観に「Before I Rise」に近いものを感じる曲です。この曲の「最近なんだかすごく眠くってさ そばにいさせて ここは寒いね」という歌詞と「Before~」の「その首に口付け 匂いを嗅いでたい あるいはここで死のうか」は、近いシチュエーションに感じますよね。それぐらい側に行きたいと思う誰かがいること、そのぬくもりってどんな風かな、とイメージしながらレコーディングに臨みました。ゲームでこの曲が使用されているイベントストーリー「That day's Friend」と一緒に聴くと、このアルバムの中で切なさNo.1の曲になると思います。Aメロのこのみさんのボーカルが柔らかくてめちゃくちゃ素敵。

■Before I Rise(Acoustic Ver.)
やなぎなぎさんが歌う「Before I Rise」は、『ヘブバン』のサイトで何度も繰り返し聴いてきて、私にとっては「こんな作品に関わらせてもらえるなんて!」とすごくワクワクさせてくれる曲だったのでそれをカバーさせていただけることがすごく嬉しく、光栄でした。茅森月歌という子のボーカルを形作ることは私にも麻枝さんにとっても難しい作業でしたが、この曲で初めて私を選んでもらった意味を果たせたように思います。私の持ち味を出しやすい曲調だったので手ごたえを感じられたし、茅森の繊細な一面を表現できたと思います。

■War Alive~時にはやぶれかぶれに~
Aメロの「Wow Wow Wow…」は第31A部隊のみんなで歌っていて、『ヘブバン』の曲を歌う醍醐味を感じます。シーレジェの楽曲も、だんだん不穏な感じがしてきました……。全曲を通してみても、このみさんのボーカルがすごくよくて、特に「やぶれかぶれに」と歌うところが好きです。私は物事の判断基準が臆病というか、自分を守ってしまいがちだけど、この曲を歌ったり麻枝さんを見ていると「全力でボロボロになるのもかっこいいじゃないか」と思えるようになりました。そんながむしゃらな気持ちにさせてくれる曲です。あと「一瞬で散ってしまう そんな恋心」という歌詞が胸に刺さりました。もどかしくて、切実で……そんな気持ちを歌詞にして、戦いに向かう自分たちの心を鼓舞していたのかな。

■Muramasa Blade!
ゲーム内イベント「セラフ剣刀武術祭」で初登場した曲です。イントロの「セイ!」、「ハッ!」という掛け声の収録が印象的で、聴きどころにもなっていると思います。麻枝さんからは「気合を入れて戦っているような感じでお願いします!」とディレクションをいただき、こだわって何回も録り直しました。私もこのみさんも、歌うというより剣道で真剣勝負するような気迫で臨んでいます。

■終末のヒーロー
「ああ 起きろ起きろ起きろって声が」のメロディーがユニークで気に入っています。麻枝さんが作るどの曲にもいえることですが、歌っていると麻枝さんの気持ちを代弁しているようで熱が入ります。「世界が敵になって それがなんだっていうの平気だろ」って本気で思う。もしかしたら、この曲は特に麻枝さんが言いたいことが詰まっている曲なのかも。「今日も寝不足 ふらふらと出かける それでも勝つ それがヒーロー」という歌詞ってそうありたいという願いで、これはお守りのような曲なのかも……とも感じました。

■Judgement Day
「ねえ今日も笑ってよ 落ちてく人生を」から始まるAメロは「セリフを言っているように歌ってください」と言われました。この曲は麻枝さんのディレクションのときの情景がとてもリアルで、「仕事で疲れ果てて誰もいない家に帰ってきて、どかっと座ってハイボールを飲む」ように歌ってほしい……と妙に具体的なディレクションをいただきました(笑)。2番の「喋ったらボロ出し 一生黙ろうか」という歌詞は、なんだか他人事とは思えないです。シーレジェ楽曲は一度落ち着いた雰囲気になるDメロのボーカルのニュアンスもこのみさんとこだわって作っていて、その切なさが効いている楽曲だとも思います。

■贅沢な感情
「Before I Rise(Acoustic Ver.)」からつながる曲だと思っています。レコーディング時はいつも麻枝さんから「茅森を自分だと思って歌ってください」と言われますが、この曲ほど、歌っていて「これは私自身のことなのでは」と感じる曲はありません。イントロのフェイクから気持ちを込めて歌っていて、「それは贅沢だ わかってる」という歌詞に「そんなこと言わないで…」という気持ちも湧いてきます。愛しいひととする儚い約束、でもそれって辛い状況下ですごい力になってくれるものですよね。歌っている事はすごく悲しいのにメロディーが美しくて、何度聴いても泣いてしまいそうになる。麻枝さんの作る曲の凄みをひしひしと感じられる曲だと思っているので、私も大切に歌っていきたいです。

■Goodbye Innocence
最初のスクリームは「whiteout!」と言っているのですが、私のデビューシングルと同じワードなので「もしかしてそこと絡めてくれたのかな?」と思ってしまいました。今後、機会があったら麻枝さんに訊いてみます(笑)。実はライブパフォーマンス含めシーレジェはハモリを大切にしているんですけど、このみさんと二音ずつ交互に歌うサビの掛け合いやハモリが聴きどころになっていて、これもライブで歌うのが楽しみな一曲です。この曲を聴いているとどうしても蒼井のことを思い出してしまいますが、茅森が蒼井を思って歌うように、聞く人がそれぞれの大切な人を想うような曲にもなっていると思います。



自分の弱さを受け入れ、
それを見せられるアーティストに

――それでは、まとめに入る前に、XAIさんの人となりが垣間見られるような細かい質問もいくつかおうかがいします。2021年11月にご自身で作詞・作曲を手がけた「Waves」のアコースティックバージョンがYouTubeで先行公開されましたが、フルバージョン配信の目途はあるのでしょうか?

XAI 実はフルバージョンのレコーディングもすでに終わっていまして、今はいつ出そうかなとタイミングを考えているところなんです。

――楽しみにしています。XAIさんは「音フェチ」であることを公言しておられますが、何かそうなるきっかけなどはあったのでしょうか。

XAI 私は「人が立てる音」はその人が意識して発信する情報よりも人となりを深く理解できる要素だと思っていて、昔から人が立てる音に強い関心があるんです。初めてそれを認識したのが、大学生のときに泊まりに行った友人の家で朝ご飯をごちそうになるときに、友達にお兄さんがお箸を手にしたときの音でした(笑)。うまく形容できないのですが、その音から内面の誠実さのようなものを感じました。ちなみに、家族のことは足音でも判別できます!

――初めてご自身で買った曲(orアルバム)は何でしたか?

XAI 家の近くにTSUTAYAがあったので、長らくレンタルばかりだったんですよね……(笑)。たぶん、初めて買ったのはいきものがかりのフルアルバムだったと思います。

――今の趣味や特技、マイブームはなんですか?

XAI 小学生のときからずっとマンガとアニメが大好きです! TSUTAYAで『苺ましまろ(※26)』『撲殺天使ドクロちゃん(※27)』をレンタルしてハマったのをきっかけに、『マリア様がみてる(※28)』『Strawberry Panic(※29)』にも夢中になりました。マンガは、少年マンガ的な熱さが欲しくなってきた最近の自分に『鬼滅の刃(※30)』がぴったりハマって読んでます。諦めない! 痛くない……! その熱さと根性に力をもらっています。

――お茶もお好きだとTwitterで拝見しました。

XAI 紅茶もコーヒーも大好きで、喫茶店めぐりも趣味のひとつです! ひとりでめぐるのも誰かと行くのも好きで、この前はこのみさんとお茶しました! コーヒーはあんまり得意じゃないっておっしゃってたこのみさんがオレグラッセ(※31)にハマってくれたのは嬉しかった! 紅茶だと銘柄はマリアージュフレール(※32)のマルコ ポーロがすごく好きで、自宅ではいつもそれを飲んでいます。

――好きな食べ物はありますか?

XAI 甘いものが好きです! 特に、スイーツならなんでも(笑)。フルーツがたくさん乗っているとさらに嬉しいですね。あと、チョコレートも大好きです!

――影響を受けたアーティストや、尊敬するアーティストを教えてください。

XAI 菅野よう子さんと中野雅之さん、宇多田ヒカルさん。海外のアーティストでは、LORDE(※33)Grimes(※34)ですね。それと、もちろん麻枝さん! 飽くなき制作意欲と作り続ける姿勢、ファンと一緒に人生を歩んでいる姿がかっこいいなと思います。

――She is Legendのボーカルとして、今後の目標や展望を教えてください。

XAI これからも『ヘブバン』を愛してくださる皆さんと一緒に、茅森としてもっともっと歌を育てていきたいです。キャラクターや物語の魅力を、歌で少しでも深く表現できるように。それが、作品に寄り添う音楽が起こせる一番の魔法……一番素敵なことだと思っています。『HEAVEN BURNS RED LIVE 2022』は2023年3月19日(日)に延期となってしまいましたが、その分思いを高めて2023年3月にしかできないライブをお届けします。そしてゆくゆくは、She is Legendでライブツアーができたらいいですね。このみさんとももっとケミ度を上げていきたいな!

――それでは、アーティストとしての目標や展望は?

XAI どんなアーティストでも、ずっとのぼり調子だということはないと思います。反対に、ずっと調子が悪いということもないでしょう。だからこそどんなときも自分にウソを付かず、そのときの自分を音楽で正直に見せられるアーティストでありたいです。弱い自分を人に見せるのは勇気がいることだけど、そういう瞬間も共有する事でリスナーの人とも仲が深まるように思います。わたしも表現にウソのない曲が好きだし、「気分じゃない」ときがないアーティストになりたいなと思いながら日々音楽に向き合ってます。直近の目標としては、自分で手がけた曲もまじえて積極的にライブをすること。ギターを弾いて自分のライブでもShe is Legendの曲のカバーもしたいですね。She is Legendのボーカルとしてこのみさんと歌うからこそできる表現があれば、アーティスト・XAIでしかできない表現もあると思うので楽しんで挑戦する姿勢を忘れないようにしたいです。

――ありがとうございます。最後に、ファンへのメッセージをお願いします。

XAI ここまで読んでくださってありがとうございます。『ヘブバン』のような多くの方に愛される作品に関わらせていただけるのはとても光栄で、私も日々たくさんのものをいただいています。She is Legendをもっともっと大きくすることで、皆さんに少しでも恩返しできたらと思っていますので、これからもリスナーの皆さんと一緒に育てていけますように! 2023年3月の『HEAVEN BURNS RED LIVE 2022』に来てくださる方は、アルバムをたくさん聴きこんでおいてくださいね! このみさんや『ヘブバン』ファンの皆さんなど、それまで見えていなかっただけで、私の周りにはこんなに素敵な"同志"が大勢いるのだと教えてくださった麻枝さんにも恩を返していきたいな。私がたくさん歌うことで、麻枝さんの人生の楽しみのひとつにでもなってくれたらいいな……なんて思いながら。なんか、ちょっと偉そうですかね(笑)。



※1 サザンオールスターズ

桑田佳祐をはじめとする5人組のロックバンド。「勝手にシンドバッド」でメジャーデビューし、以降、さまざまな名曲を生み出している。

※2 TOTO

1976年に結成されたアメリカのロックバンド。4thアルバム「TOTO IV~聖なる剣~」は1,200万枚以上のセールスを記録した。

※3 宇多田ヒカル

日本国内の歴代アルバムセールス1位や、デジタル・シングルのセールで世界1位などを記録するシンガーソングライター。

※4 いしだあゆみ

歌手。1964年デビュー。1968年にリリースしたシングル「ブルー・ライト・ヨコハマ」が大ヒットし、累計150万枚以上を売り上げるミリオンセラーとなった。

※5 いきものがかり

現在、水野良樹と吉岡聖恵で構成しているバンド。ドラマやアニメの主題歌なども手掛けている。

※6 サカナクション

2005年より活動しているロックバンド。「ショック!」や「三日月サンセット」、「ナイトフィッシングイズグッド」などの楽曲がある。

※7 Superfly

越智志帆がボーカルを務める音楽ユニット。今年、デビュー15周年ライブを開催した。

※8 コブクロ

黒田俊介と小渕健太郎による日本の音楽デュオ。ユニット名は2人の名字から名づけた。

※9 VOCALOID

ヤマハが開発した音声合成技術、またはその応用製品の総称。略称はボカロ。VOCALOIDを使用した楽曲はボカロ曲、VOCALOIDを使用して楽曲の作曲家はボカロPと呼ばれる。

※10 THE VOC@LOiD M@STER

ボカロ楽曲を専門に扱う同人誌即売会。略称はボーマス。

※11 ハチ

シンガーソングライターの米津玄師が、ボカロPとして活動していたときの名義。

※12 マクロスF

マクロスフロンティア。テレビアニメーション『超時空要塞マクロス』より派生した作品で、2008年にテレビ放映された。ランカ・リーとシェリル・ノームというふたりの歌姫が登場する。

※13 菅野よう子

さまざまな楽曲を手掛ける作曲家。ゲームでは『三國志』や『信長の野望』(共に現・コーエーテクモゲームス)など、アニメでは『マクロスプラス』『カウボーイビバップ』などがある。

※14 MANYO

PCゲームやコンシューマのBGMや主題歌を手掛ける作曲家。ゲーム『初恋1/1』や『星織ユメミライ』(共にtone work's)のBGMやボーカル曲を担当。

※15 やなぎなぎ

シンガーソングライター。Keyの麻枝 准とのコラボレーションし、さまざまな楽曲のボーカルを担当。やはり『ヘブンバーンズレッド』での楽曲がなじみ深いかと。2012年にMANYOとユニットmamenoiを組み、ファースト・アルバム『Tachyon』をリリースした。

※16 DAOKO

ラップシンガー。中学3年生の時にニコニコ動画にラップを投稿し始めたのを機に、高校入学と同時にインディーレベルと契約。独特の作品世界と卓越した歌唱力が大きな注目を集め続け、2015年に高校卒業同時にメジャーデビューを果たす。

※17 フライングドッグ

『マクロス』シリーズほか、数多くのアニメーション作品の音楽制作を手がけるレコード会社。作曲家の菅野よう子、梶浦由記、声優アーティストの坂本真綾、鈴木みのり、東山奈央など、そうそうたるアーティストが多数在籍している。

※18 マクロスΔ

マクロスデルタ。『マクロス』シリーズのテレビアニメーションで、2016年に放映された。

※19 マクロス7

マクロスセブン。『マクロス』シリーズのテレビアニメーションで、1994年から1995年に放送された。

※20 「東宝シンデレラ」オーディション

東宝と東宝芸能が不定期にて開催している女優オーディション。沢口靖子、長澤まさみ、上白石萌歌などがグランプリに輝いている。XAIはその第8回のアーティスト賞を受賞している。

※21 テニスの王子様

中学校の部活動テニスを題材とした許斐剛のマンガ。またそれを原作としたアニメ・ゲーム・実写作品群。

※22 ダイアモンド クレバス

『マクロスF』の前期エンディングテーマ。作曲・編曲を菅野よう子が、作詞を hàlが担当し、May'n がシェリル・ノーム starring May'n名義にて歌唱している。

※23 『GODZILLA』

ポリゴン・ピクチュアズ制作によるアニメーション映画。『ゴジラ』シリーズで初の映画アニメ作品。『GODZILLA 怪獣惑星』『GODZILLA 決戦機動増殖都市』『GODZILLA 星を喰う者』の三部構成となっている。XAIはそのそれぞれの主題歌「WHITE OUT」「THE SKY FALLS」「live and die」と挿入歌「エバーグリーン」を歌唱している。

※24 中野雅之

ミュージシャン、ベーシスト。1990年にロックバンドBOOM BOOM SATELLITESを結成し、97年に欧州でデビュー。バンドとしての活動を2016年に終了し、以降はプロデュース、コンポーズ、アレンジ活動を本格的に行っている。『GODZILLA』において、主題歌などの作曲・編曲も担当している。

※25 鈴木このみ

女性歌手。第5回全日本アニソングランプリ決勝大会グランプリ受賞者。『Summer Pockets』や『Summer Pockets REFLECTION BLUE』のオープニングなどでおなじみかと。

※26 苺ましまろ

ばらスィーによるマンガ。またそれを原作としたアニメ、ゲーム作品群。キャッチコピーは「かわいいは、正義!」。

※27 撲殺天使ドクロちゃん

おかゆまさきによるライトノベルシリーズ。またはそれを原作としたアニメ・漫画・ゲーム作品群。

※28 マリア様がみてる

今野緒雪による少女小説シリーズ。コミックスやアニメにもなっている。

※29 Strawberry Panic

『電撃G's magazine』(現・KADOKAWA刊)連載の読者参加企画『Strawberry Panic!』のテレビアニメ作品。

※30 鬼滅の刃

吾峠呼世晴によるマンガ。またテレビアニメーションや劇場アニメーションになり、一世を風靡した。

※31 オレグラッセ

フランス語で「つやを出す牛乳」という意味で、コーヒーと牛乳を2層に分けた飲み物。コーヒーのほろ苦さと牛乳の甘味を味わうことができる。

※32 マリアージュフレール

紅茶文化を受け継ぐフランスの老舗紅茶専門店。1660年頃、フランス初の茶類輸入業者としてパリに設立し、フランス式紅茶を提供している。マルコ ポーロは、フルーティで人気の紅茶。

※33 LORDE(ロード)

ニュージーランドのシンガーソングライター。2013年に若干13歳でユニバーサルミューニックと契約し、同年にリリースしたデビューシングル「ロイヤルズ」は全米・全英のシングルチャートの首位に立った。2021年時点で、アルバムの売上は全世界で1,200万枚以上におよぶ。

※34 Grimes(グライムス)

カナダ出身のソロミュージシャン。2007年から音楽活動を始め、2012年にリリースした3rdアルバム「ヴィジョンズ」が世界で高く評価され、一躍脚光をあびる。2020年には5thアルバム「ミス・アントロポセン」をリリースした。